いつもとなりにはコーヒーがあった

朝ごはんの時、仕事中、友達とカフェでおしゃべりをする時…
生活の中のあらゆる場面で登場するコーヒーは私たちの暮らしの「名脇役」ともいえるでしょう。
さまざまな人の「となりのコーヒー」にまつわるストーリーを伺うシリーズ。
まずはSPROUTのスタッフから好みのコーヒーと合わせてご紹介します。

#5 [ KENYA ]
「丁寧という技術」Mizue BARISTA
Photo : Yoshi  Text : Yoshi

 
 
 
「ミズエちゃんが淹れてくれたコーヒーは本当に美味しい」
「ミズエちゃんが作るアイスコーヒーはすごく冷えていて体にしみる」
SPROUTの常連の多くのお客様からこういった声をよく耳にする。
同じ材料で同じレシピで作っているけれど、その違いはどこにあるのだろう。
 
今回の「いつもとなりにはコーヒーがあった」はSPROUTでバリスタとして働く、スタッフのみんなからはお姉さんのような存在で慕われているミズエちゃんに、オススメのコーヒーとともに美味しくコーヒーを淹れるポイントのようなものを探りながら話を聞いてみた。
 
 

 

「私はSPROUTで働く他のスタッフのみんなとは違ってコーヒーが好きじゃなかったんです。SPROUTができて旦那さんがここの店コーヒー美味しいよって話をしてくれていて、それで飲んでみたらすごく甘くて美味しくて、苦くなかった。すごくいろいろな味がするっていうのが新鮮だったの、私の中で。こんなに美味しいコーヒーがあるんだっていうのを初めて感動して、もっとコーヒーのことを知りたいっていう興味が出てきました。
何度かコーヒーを飲みにSPROUTに行っていて、たまたまラテアート体験っていうのをやっていて、それに参加しました。それがすごい楽しくて、上手にはできないけど自分でスチームして、楽しくて美味しくて、ますます興味が出てきて…。そしたらスタッフ募集してるよって声をかけてもらって、ドキドキしたけど働いてみようかなと思って、SPROUTで働き始めました。」
 
「働き始めると、まず接客というかカフェ経験がなかったから、お客様との対応の仕方だったり、どうしたらいいのかわからないことがたくさんあって、英語も話せないし、いっぱいいっぱいでパニック状態になってしまう場面はたくさんあって…。思っていたよりもたくさん仕事があったし…。あ、カフェで働くってたいへんな仕事なんだなっていうのを実感しました。」
 
ミズエちゃんがSPROUTで働き始めたのは6年前の2014年。ゆっくり仕事を覚える間もなく冬のピーク時期に突入し、大忙しで必死になって仕事を覚えていった。そんな苛烈な状況の中でもコツコツとひとつずつこなしていく姿がSPROUTのスタッフの中でも安心感を与え、いつの間にか頼れる存在になっていた。
 

 

「接客もまだまだ勉強中ですが、意識していることは、まず、丁寧な対応です。お客様が何を求めているのか。コーヒーが好きな人もそうでない人もいるので、丁寧に説明したり。あと、大事なことはコーヒーを一つ一つ丁寧に淹れること。それが一番大事だと思っているので日々心がけています。
丁寧にコーヒーを淹れるポイントは、一つ一つの動作を丁寧にすることです。さらに砂糖やシロップを入れるオーダーでは、混ぜた時に溶け残しがないようにしっかり混ぜたり、アイスドリンクだったらエスプレッソをキンキンになるまでしっかり冷やしたりということです。
それはコーヒー以外にのことにも繋がっていて、お客様には気持ちよく過ごしてもらいたいから、お客様が座る席や洗面所、その他にも目に見えないところも綺麗にすることを心がけています。
特別なことはできないけれど、それくらいは私にもできることだと思ってやっています。」
 
技術を要することは専門的に学んだり、トレーニングをしたりしないと実践で活かすことはできない。しかし、『丁寧に』ということは誰もが心がけ次第でできるとても大切なことだ。それを何年も忠実に続けることが、自然なことになり、美味しいコーヒーという個性となって現れたのではないかと感じた。技術は真似できるものではないけれど、『丁寧に』ということは誰もが見習うことができることだ
 

 

「私は子育てもしていたり、家族との時間もあって、なかなかカフェに行ける機会が少ないから、家族や知り合いに自分でコーヒー豆を挽いて淹れて飲んでもらうことがすごい嬉しくて楽しくて…。淹れたコーヒーで美味しいって言ってもらえることがすごく好きです。中学生になった息子がコーヒーは苦いものじゃないって知ってくれてて、美味しいって言って飲んでもらえることも嬉しくて、コーヒーに関わっていて良かったって思う瞬間でもあります。
家族と出かけるときや実家に帰るときも、私のコーヒーセットは必ず荷物の中に入れていきます。親に飲んでもらったり、友達の家でもそれで振舞ったりすることが好きで、私が体験した、こんなに美味しいコーヒーがあるんだよっていうのを体験してもらいたいと思ってます。」
 
「私は誰かにコーヒーを飲んでもらいたいと思う時に薦めるのはケニアのコーヒーです。ケニアはなかなか個性的で、苦手な人もいるし、すごく好きな人もいて、好き嫌いが分かれるコーヒーだと思います。袋を開けた瞬間からケニアの匂いがはっきりとわかって、主張している感じがすごく好きです。ケニアはケニア。挽いてもケニア、飲んでもケニアなんです。最初の香りの印象がフルーツトマトで、飲んでみるとカシスみたいにキュッとした感じで、冷めていくにつれて綺麗な酸味が出てくる。でもミルクと合わせると全く印象が変わってすごく甘くなるんです。ケニアの主張していたカシスのようなキュッとした印象が丸くなって、その裏の顔みたいなところがあるのも好きなポイントです。毎日飲むならブレンドとかクセのないものがいいと思うけど、特別感があったり、コーヒーの楽しさを体験してもらうならケニアはすごく衝撃的でハッキリしていていいと思います。」
 
美味しいコーヒーをお届けするには技術も必要だけれど、今回ミズエちゃんの話を聞くことができて感じたのは、技術の前にもっと大切なことがあるということ。「一つ一つのことに丁寧に。自分が心動かされた感動を相手にも感じてもらいたい。」その気持ちが毎日コーヒーを飲んでいる常連さんにも伝わっているのだと思う
 
 

 

MIZUE (ミズエ) SPROUT BARISTA 
北海道出身。結婚を機に倶知安へ移住。住んで15年になるが、朝起きると必ず羊蹄山を見るのが日課となっている。現在は中学生と小学生の男の子2人を育てながら奮闘した毎日を送っている。