文字にして書き記したら旅が終わってしまう、そんな気がしてなかなか書けない。
もう少し旅の余韻に浸っていたい。
ネパールの旅、エベレストベースキャンプへの旅は、僕にはとって大切な旅のひとつだ。
旅から戻って3ヶ月が経った。
次の旅へ向かおうとしている今、その時その時で考えたことを書き記して残しておこうと思う。
Bistarai Bistarai
「ユックリデイイデスカラネ」
「ヤスミナガライキマショウ」
「ダイジョウブデスカラ」
ガイドのバルさんの声が頭の中に残っている。

「Bistarai Bistarai」というのはネパール語で「ゆっくり ゆっくり」という意味で、ネパールの人たちがよく口にする言葉だそうだ。実際に日本からネパールに行く飛行機の中でも、カトマンズの街中でも、エベレスト街道でも「Bistarai Bistarai」という言葉がよく聞こえてきた。
「ゆっくり ゆっくり」「落ち着いて 落ち着いて」「大丈夫 大丈夫」…、そんなふうに広い意味で使われ、自分に言い聞かせたり人に伝えたりするのだろう。
僕らの旅もカトマンズで開催されたコーヒーイベントの名前が「Bistarai Bistarai Coffee Festival」というのもあって、「Bistarai Bistarai」は合言葉のように使われていた。

高山病
標高の高い場所で低酸素状態になった時になり、吐き気、眠気、だるさ、めまいなどの症状が出る。
体力があるないに関わらず、体質で症状が出やすい人とそうでない人がいるようだ。
僕は高山病になりやすいタイプの人だ。これまでのハイキングでも2000mを超えると頭がぼーっとすることがよくあった。

今回のハイキングでは歩きのスタート地点であるルクラまでは飛行機で移動するが、そのルクラが標高2800mもある。前日までの寝不足もあるかもしれないが、僕は歩き始める前からフワフワした感覚と眠気でだるい状態だった。正直にいうと最初の宿泊地のPhakdingまでの記憶があまりない。歩いている間はずっと眠くて仕方なかった。夕方に宿に着くなり夕食も取らずに朝まで起きず12時間以上の睡眠した。

高所順応
Phakdingでの長時間の睡眠のおかげで体は回復し、高所で酸素が薄いための息切れなどはあったが、それ以外は問題なく歩けていた。
エベレストベースキャンプまでの行程では高所順応日という日がスケジュールに組み込まれている。僕らのツアーでは悪天候でルクラへの飛行機が飛ばず、1日遅れで行程を進んでいたため、高所順応日は標高3400mにあるNamche Bazarの1日だけになった。

順応とは環境や状況の変化に合わせて行動や生理機能を変化させて適合することをいう。
エベレスト街道のトレッキングでの高所順応では、「ゆっくり進むこと」「休むこと」が大切だ。
高所順応日の行動は先に進まずに、宿泊地から少しだけ標高を上げて散歩や軽いハイキングをして、また元の標高に戻る。不思議なことに一旦上がって少し下がるだけで身体は楽になっている。

急ぎすぎている日常
僕らの日常は気がつくといつの間にかスピードが速くなっている。
すぐに結果を求めたり、周りの空気に馴染めなかったり。
自分で歩んでたどり着いた今の場所でも、気がつくと空気が薄くて苦しく感じたり、環境に合わなくなっていたりすることがある。

順応というのは素晴らしい技術だ。
逆らわず、無理をせず、ゆっくりゆっくり。
「無理をすると体調が悪くなりますね」
「もっとゆっくりでいいですよ」
「大丈夫です、ゆっくりどうぞ」
ハイキング中にかけられていた言葉は、日常の歩みにも響く言葉だった。

ゆっくりゆっくり歩いているおかげで、その環境に身体が馴染んできているのがリアルにわかる。
何も無理をしていない。
リラックスした状態で、環境に合わせて進んでいると見えなかった景色、聞こえなかった音、気が付かなかった匂い、たくさんのことを感じることができる。
圧倒的な自然の中で人間ができることなんて小さなものだ。

Yoshi
Sproutのオーナー
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