山に雪が積もり、バックカントリースキーへ出かける季節がやってきました。

山目線

まだ日が昇る前の時間から準備をはじめる。車を運転して登山口へ行く途中から少しずつ明るくなる。山の天気、雪の状態が気になってソワソワしたり、山に入る前の独特の緊張感でドキドキする。
降り積もった雪が音を吸収するので山の中は静寂に包まれている。カチッカチッという登坂する際にブーツとビンディングが当たる山スキー特有の音だけが響く。
前日に降り積もった雪で跡は消えており、誰も入っていない山にいる感覚になる。時折、キツネやウサギの足跡があり、それを辿って歩く。山を歩く際は野生動物の歩いた跡を辿るのが一番歩きやすい。
標高を上げていくにつれて風が強くなり、寒さも増してくる。滑走する斜面も見え、ターンを切るラインをイメージしながら緊張感が増してくる。

山と会話

山を登っている時の会話というのは本当に他愛もない会話だ。
家のことや仕事のこと、旅行に行った話から昨日の夕食の話まで。そんな会話が心地よい。
仲間同士で会話しているのだが、不思議と山と会話しているような感覚になる。
日頃から抱えている考え事や悩み事も山に聞いてもらって、山から答えが返ってくる感覚だ。だから、自分の考え事や悩み事がとても小さなことに思えてくる。
大きな視点でものごとを見ると、見えなかったものが見えてくる。
相手と同じ目線になって、同じ方向を見て、同じことを考える。
コーヒーを焙煎、抽出、提供することも同じだ。コーヒー豆の状態、気温や湿度といった環境、温度や濃さ、飲む人の好み、小さなことに気づくには大きな視点で見なければいけない。

自然はいつもたくさんのことを教えてくれる

登坂が終わり、登坂用のスキーシールを剥がし、ウエアを着て手袋を履き、ヘルメットとゴーグルを装着して、スキーをセット、視界が開けた瞬間に滑り出す。
はじめのターンは雪や体の状態を確認する。あとは斜面に身を任せて地形に合わせてターンを刻みながら滑り降りていくだけ。
雪や天気など条件は変われど山自体は変わらない。自然は変化するが変わらずにそこにある。
自然の中で時間を過ごすと自分が変化しなければいけないということに気付かされる。
ものごとの変化に合わせて「観察、対応、適応」することが自分が変化するということ。
自然はいつもたくさんのことを教えてくれる。