「いつかはチャレンジしなくちゃいけないんだから。」
そう言われたのは何年前のことだろうか?
普段から品質の良い生豆を焙煎する機会には恵まれていて、丁寧に焙煎することには日頃から気をつけているつもりでも、今回はその中でも特に神経を集中しました。
「ゲイシャ」コーヒー好きの人はこの名前のコーヒーを耳にしたことがあるはず。
コーヒー豆の品種の一種であるゲイシャ種は、もともとエチオピアのゲシャという地域に自生していたことからゲシャ種と呼ばれていたましたが、やがてゲイシャ種として世界中に知られる品種となりました。そのきっかけとなったのは2004年、パナマの国際オークション(Best of Panama)で出品されたゲイシャ種のコーヒーが史上最高値を大きく更新したことは有名な話。
価格、希少価値からもゲイシャというコーヒーに壁を感じ、「自分にはまだ早い、もっと経験を積んでから、、、」そう思って遠ざけていたけれど、その時は突然やってきました。
決して機が熟したわけでもなく、経験を十分に積んだからでもなく、何年も前に言われた言葉「いつかはチャレンジしなくちゃいけないんだから。」という心に残っていた言葉が生豆の出会いと同時に訪れたのです。
初めて焙煎させていただいたゲイシャは、ボリビアのラパス・カラナビ・ボリンダという地域。標高1464m~1644mにあるラス・アラシータスという農園。ペドロ・ロドリゲス・ペニャリータ氏が運営しています。
ボリビアでは元々、鉱山で働いていた人々が集団居住を行い、「コロニー」というコミュ二ティ(村の様なもの)を作って生活しており、これらの人々に土地が与えられコーヒー栽培が伝わり、ボリビアでのコーヒー栽培が盛んになりました。その多くは大変小規模で家族単位で農園を営んでいます。このような歴史的背景があり「管理・手入れをしてコーヒーを栽培する」というよりは「コーヒーの実がなったから収穫しに行こう」というような感覚のもと、コーヒーを栽培しています。
そのため、原生林の中で何もせずにコーヒー栽培をしている農家が多く、収穫量は落ち、生産性も悪化しています。さらに、現在ボリビアではコーヒー栽培からコカ栽培に転じる生産者が多く、国全体のコーヒーの生産量が激減しています。
そのことに危機感を覚えたペドロ・ロドリゲスさんは、自社農園の経営を始めました。
ラス・アラシータス農園は、ペドロさんが運営する複数のコーヒー農園の中で、ボリビアの優良生産地カラナビに3番目に作られた農園です。カラナビで最も面積の広い農園でもあります。
この農園は、この地方に住む生産者たちがカラナビの町にやってくるときに使う通勤路のそばに位置しています。ペドロさんたちは、毎日ここを通る生産者たちへの一つの模範例としてこの農園を手がけ、大きな成功を収めました。
たくさんの生産者たちがラス・アラシータス農園に関心を持ち、ペドロさんたちにアドバイスを求めにやって来たり、真似をして自分たちで同じような農園を作ろうとする人も現れました。
世界的にラス・アラシータス農園は未来の農園の基本モデルとして認知されています。
また今回のお豆はその農園のゲイシャ種の中でも「ピーベリー」と呼ばれる豆を集めたものです。コーヒーの実の中にはふたつの種が向き合って入っていますが、たまにひとつしか入っていないものもあって、丸い形をしていて「ピーベリー」と呼ばれています。
そんな貴重なお豆を焙煎させていただき、カッピングをした印象は最初の温かいときは華やかで特徴のあるゲイシャフレーバーを感じ、冷めてくるにつれてマイルドな酸味が出てきます。しっかり味わえる温度になると、カカオやココアのようなボディがあり、そしてハチミツのような口当たりと甘さが印象的で、明るい余韻が長く続きます。
トロトロした口当たりの甘い果実のようなコーヒーはずっと心に残るコーヒーとなるでしょう。
「いつかはチャレンジしなくちゃいけないんだから。」そのいつかは突然やってきます。
突然やってきた「いつか」というチャンスを逃さないためにも1日1日がとても大切なのだと実感しました。
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Yoshi
Sproutのオーナー
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