2021年12月18日から2022年1月16日の間、Camp&Go White Wall Roomにて田中マリナ個展「タイトル未定」が開催されました。

開催にあたってキュレーターからの紹介文です。

このたび『Camp&Go / WHITE WALL ROOM』にて田中マリナ個展『タイトル未定』を開催します。

まだ18歳だった田中マリナは、ニセコへ遊びに行こうと札幌から列車にのり、間違えて降りてしまった倶知安駅の駅前にあった、感じの良さそうなカフェの扉を開けました。創業間もない『SPROUT』でした。これが、現在はプロとして多方面で活躍するイラストレーター「田中マリナ」のはじまりの場面です。
気さくなスタッフによくしてもらい、その後はSPROUTを目的地にニセコへ通うようになります。そして、店内や商品のためのイラストを依頼/制作する関係へと、お互いの成長と変化を共にしてきました。もちろん、心地よいカフェとそこに通うお客さんという間柄はそのままに。

このたびの個展では、田中マリナのプロフェッショナルなイラストレーターとしての「仕事」からは少し距離を置きます。そしてさらに、「かわいい女の子」という、彼女自身や彼女の仕事に「期待される」イメージからも離れてみようとします。
ともすれば、彼女のキャリアにとってネガティブなものとなりかねないチャレンジを可能にするのは、『SPROUT』や『Camp&Go』が常にそうであったように、「田中マリナ」の新しい試みを、あたたかく懐深く受け止めてくれると信じているからでしょうか。それは、母胎へ回帰し、新しく生まれ変わるための儀式のようでもあります。

「タイトル未定」という斜に構えたような展覧会タイトルは、実は、田中マリナの現在をそのままに反映しているのだと思います。答えを出してしまうことからあえて遠ざかり、どこに行き着くかわからないままに、一歩一歩踏み出した地面の感触を楽しんでいるかのような、彼女の仕事と彼女自身のあり方にとって、今はまだタイトルが決定される必要はありません。
そんな「田中マリナ」の現在進行形を、出会いから10年たったこの場で臆せずあらわにする展覧会は、間違えて降り立った駅前にあったカフェとお客さんの関係性からはじまったすばらしいストーリーをみなさんと共有する時間となるでしょう。

Camp&Go キュレーター豊嶋秀樹

田中マリナさんはSPROUTオープン当初からイラストで関わってくれて店内のメニューボードやコーヒーのパッケージなどを手がけてくれ、またCamp&GoでもLOGBOOKやフロアマップなど、ほとんどのイラストにかかわっていただいてます。

田中マリナの現在をそのままに反映しているような展覧会にしようというところから付けられた展覧会のタイトル「タイトル未定」は、依頼されて描くイラストレーターとしてではなく、自らの意志で描いた作品は観る人にさまざまな印象をもたらせたと思います。

個展期間中は何度も倶知安に足を運び、スキーをしたり自然を感じ、会場に在廊して絵を描き、たくさんの人と話をしていました。
そして初めての個展開催が終了し、作品が全て撤収されたとき、未定だったタイトルはどうなったでしょうか?

タイトルが決まってその道を突き進むかもしれないし、ずっと未定のまま深くなっていくのかもしれない。その答えは1ヵ月間向き合った本人だけが知っています。

今回の展覧会が作家である田中マリナさんにとって意義のある展覧会となってくれたら嬉しいです。
SPROUTはじめ、Camp&Goはこれからも田中マリナさんを見続けていきたいと思います。

とっても素晴らしい展覧会でした。
お疲れ様でした。