自分が楽しむ山

早朝にひとりでイワオヌプリに出かけました。
夜明けとともに登り始め、頂上に着いた時にちょうどアンヌプリの方から太陽が顔を出しました。
太陽が出始めるときは陽のあたる雪面がピンク色に染まり、それが次第に広がり、気がつくと全体がピンク色に染まって自分がその世界の中に入っていきます。
そしてスキーを履いて日の出とともに斜面にドロップイン。
ひとりで山に入る緊張感と幻想的な世界、無事に下山した時の開放感。
これはひとりで行かないと味わえないものかもしれません。
人は心を通して景色を見ます。同じ景色でも見る人によって感じ方が違います。
誰もいない静かな山で感じた景色は純粋に今の自分を映し出しているのだと思います。

感動を伝えるということ

星野道夫さんの本で出てくる好きなフレーズがあります。

ある夜アラスカの氷河の上で、友人と今にも降ってきそうな星の下で話をしている。
「いつか、ある人にこんなことを聞かれたことがあるんだ。 例えば、こんな星空や泣けてくるような夕陽を一人で見ていたとするだろう。もし愛する人がいたら、その美しさやその時の気持ちをどんなふうに伝えるか?って」
「写真を撮るか、もし絵が上手かったらキャンパスに描いて見せるか、いややっぱり言葉で伝えたらいいのかな。」
「その人はこう言ったんだ。自分が変わってゆくことだって… その夕陽を見て、感動して、自分が変わってゆくことだと思うって」

感動を伝える山

日中はいつもお世話になっている「山と道」の代表の夏目さんと「オトプケニット」の清瀬夫婦と一緒にスキー場のあるアンヌプリに登りました。
昨日まで降り続いていた雪がやんで快晴の天気。こんな日は一年でそう何度もありません。
そんな時にアンヌプリ山頂に登り、東尾根を滑り下り、下から見上げた景色に感動して冬のニセコに魅了された人は数え切れないほどたくさんいます。

僕の友人の、ある二人も同様にニセコの冬のこの景色に魅了されています。いつもたくさんの影響を与えてくれ、「山と道」を繋いでくれた、僕にとっては兄貴的な存在の二人。
その二人は夏目さんの親友で、お互いがお互いの話ばかりをするような仲。その二人が魅了された冬のニセコを象徴する場所を自分が案内できたことに不思議さを感じました。
この時の自分には全く自分の欲はなく、ただただ、「これが親友の二人が惚れ込んだニセコです。」という思いだけがありました。

山で気づかせてもらえること

同じ山でもそれぞれに見え方や感じ方が違います。その中で自分が山に入って感動した時に、それを誰かに伝えたいという思いは誰もが少なからずあると思います。また誰かが感動したことをその人の大切な人に伝えたり。そして感動を伝えることでその人が元気になったり、喜んだり、伝えることでその人の力になれば、それはとても素晴らしいことです。
スペシャルティコーヒーも同じで、たくさんの人の手を通して引き継がれたコーヒーは、たくさんのストーリーがあり、美味しさがあり、感動があります。
その感動をどう伝えるか、写真を撮るか、絵に描くか、言葉にするか…。
それは山の感動を伝えることと似ているのかもしれません。