さんかくらいふ -物語を循環させる旅 in Guatemala- #8
ROSMA
Alejandro Morales
つくりあげた歴史
ROSMAは標高1900mの山の稜線上に位置する絶景の場所。
1963年に祖父がブルボン種とティピカ種が植えられていた農園を購入し、1980年に父が農園を引き継ぎ、農園名を「ROSMA」とした。
「ROSMA」の名前は奥さんのRosa Mariaの名前から付けられた。ロゴは奥さんの横顔になっている。

当時は道がなく、舗装路から農園までの5kmを奥さんと2人で通った。道はコミュニティのみんなで自分たちでつくった。工事は自分たちで行わなければいけなかった。
また、水も5km離れた山からパイプを整備して引いてきた。
電気が通ったのは1998年頃で、ウェットミルでは現在もガソリンで動くエンジンモーターを使用している。
現在は息子さんのアレハンドロさんが引き継いで運営されている。

広大な景色の中で、遠くに見えている場所から水や道路、電気を繋いできたその労力は計り知れない。

環境への配慮
ROSMAの農園に訪れて一番に感じるはところどころにゴミ袋が設置されていたり、注意を促す看板がせちされていること。もちろんゴミは全く落ちていない。
隣には収穫時にピッカーさんたちが寝泊まりする場所があり、そこもきれいに整えられていた。

ウェットミルでは生産処理で汚染された水の処理として、斜面の一段下がったところに貯水タンクがあり、そこからだんだんと下へ、合計5つの処理タンクが設置されている。
最初のタンクに汚染水が流れ込み、そこへ石灰を少し混ぜた水を投入すると、作業で出た残り物が沈澱し、上澄だけが流れ次のタンクへ。その工程を5回繰り返し、完全ではないがきれいになった水は農園の散水として使用され、直接川に流れることはない。

「自分たちの手の届かないことを、自分たちの次の世代に残したくない」とアレハンドロさんは言っていた。
環境への配慮はコーヒーの木々やチェリーの美しさにも表れている。
ROSMAのコーヒーの木々やチェリーはツヤツヤで生き生きして、ここに関わっている人たちと同じように本当に幸せそうだ。

シナバフル・プロジェクト
ウエウエテナンゴの小規模生産者たちが協力し、共に品質改善、向上に取り組んでいる。
プロジェクトのスタートのきっかけはロットごとに品質の違いがあることを知ってからで、ROSMAがリーダーとして指揮をとり、ウエウエテナンゴの品質の底上げと認知拡大が目標となっている。

現在は80以上の生産者と取り組み、品質向上、生産処理、汚水処理などのアドバイスやサポートを行っている。
主な活動としては、シェードツリーの保護、種子や苗木の提供、ピッカー指導、品質評価などコーヒー生産に関わる全般に及ぶ。また、それだけではなく、低金利での融資や医療活動、託児所設置など、地域にとって欠かせないものとなっている。

Familia Jimenes
1980年より本格的に始動したROSMAとともに、これまでずっと一緒に取り組んできた縁の深い家族でROSMA農園の管理者でもあり、「Familia Jimenes」という名前のロットとしても生産されている。

「ROSMAのチェリーがきれいなのはヒメネス家の父であるパスカルさんが厳しくチェックしているからだ」とアレハンドロさんは言う。
パスカルさんはROSMAでずっとピッキング指導、生産処理のチェック、品質に関わるすべてを管理してきた。労働者の70%ほどがマヤ語を話すため、コミュニケーションを取るための重要なキーパーソンでもある。

できること
2024年にROSMAを訪れた際に作業中だったヒメネス家の3代目ネリーが言った言葉が心に残った。
「こんなに山奥の自分たちの農園に、遠いアジアの国の人が来るなんて考えてもいなかった。
コーヒーをつくり続けて本当に良かったと思っている。世界の離れたところで、自分たちのコーヒーが飲まれていて、喜ばれていると思うと、もっともっと頑張りたいと思った。」

僕らは彼らのつくったコーヒーでどれだけ素晴らしい想いをしているか、まだまだ伝えられていない。
コーヒーがあることで人に出会い、世界が広がり、暮らしが豊かになる。
これまでコーヒーに関わってきて、たくさんのそういったシーンを実際に見てきた。
コーヒーは飲んで終わりではない。その後の物語を伝えていくこと、返していくことで新たな物語が生まれ、物語は循環していく。


Yoshi
Sproutのオーナー
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