辺りはすっかり緑が広がり、見渡せばニセコ連峰の山々の残雪も無くなろうとしている。3月から降雪が続かなかったことが影響し、雪解けが2~3週間早いだろうか。だが、シーズンを振り返ると、シーズンのスタートが少しゆっくりではあったものの12月後半からしっかり雪が積もり出し、1月2月と例年通り山やスキー場で楽しい時間をたくさん過ごすことができた。そして、数年ぶりに再び外国人旅行者の賑わいも見せ、スキー場や山や町もまた賑やかな冬が戻ってきたシーズンとなった。
マッシュポテトは2シーズン目を迎え、すっかりたくましく滑る彼らの成長を感じた。そんな彼らは、シーズンを重ねるごとにできることや滑れる場所が広がり、スキーに自由を感じていることがリフトの中での会話や笑顔からも感じとれた。僕にとってそのことは心から嬉しく、そんな彼らと一緒に過ごす時間はいつも楽しみである。
今シーズンは春になったら、自分の足で登って山を滑ろうと一つ目標を掲げて シーズン過ごした。いつもはリフトを使って、整備されたスキー場のコースや未圧雪コースを滑っている。昨シーズンは、リフトとトップから30分歩いてアンヌプリのピークまで登り滑ったが、リフトがない山を下から登り滑ることは彼らにとって きっとアドベンチャーなことだ。
3月末。彼らの春休みの期間に合わせて、イワオヌプリにみんなで登りに行った。
彼らの家族、SPROUTスタッフのガイ君の大パーティー。
待ちに待った大冒険の一日。
彼らにとって何を感じ、何を思う1日になるのだろう。そんなこと思いながら、一歩一歩力強い足取りで歩く彼らを後ろから見守った。
途中休憩をしながらも、弱音を吐く事なくあっという間に稜線に立ち、スキーとザックを置いてイワオヌプリのピークを目指す。
ピークに立つとまだまだ春になりきらない、冷たい北風が吹く。
みんなとハイタッチをかわして記念撮影。
正面にはいつも滑っているアンヌプリが見え、ぐるりと辺りを見渡せば、ニセコ連峰のパノラマが見える。
初めて自分の脚で登り、家族、みんなで登ったその雄大なその景色と思い出は、時間と共に鮮やかに、きっと忘れぬ思い出となっていくことだろう。
最後まで力強く、弱音を吐く事なく登った彼ら。
いよいよ待ちに待った滑走タイム。
いつもはスキー場でアグレッシブにターンやジャンプを楽しむ彼ら。同じ滑るという行為でもスキー場を滑るのと山を滑るのとでは大きく違う。そんな彼らがどのように滑りきるのかとっても楽しみだった。
滑り出す前、少しの緊張感を感じていたもののいざ滑り出すと思い思いに堂々とイワオヌプリにシュプールを刻んで滑りきった。山のスケール感に負けないアグレッシブにターン刻むほっちゃん。広い斜面を大きく使い、思い思いに丁寧にターンを繋いだサク。
そんな彼らの滑りを上から見ていた僕は鳥肌が立った。
僕も最後斜面を滑りみんなと合流。みんなで下から斜面を見上げて、『あそこ気持ち良かったー。あそこに行けば良かった。気持ちよかったね!』なんていう、会話もとっても心地よい。
そして最後の最後まで、みんなで笑顔が途切れることなく過ごした今シーズン最後のマッシュポテトの1日。
ニセコ連峰の懐で彼らの成長を感じ、みんなで過ごしたその幸せな時間は僕にとって人生で忘れることがないと幸せな1日になった。
僕は彼らと同じく、羊蹄山の麓で育ちスキーをしているものとして、スキーに情熱を注ぎ人生を歩んでいるものとして伝えたいことは、
「スキーを通じて、彼らが何を思い、何を感じるか」
それは思いやメッセージを直接伝えることではない。純粋に熱中し、遊んだ先に感じるものを思う存分感じて欲しい。僕たちが熱中しているフリースキーがゆえに、 感じ取ることも想うこともそれぞれで、正解も不正解もない。
そんな彼らをフォローしながら共に真剣に彼らの「楽しい」を導くことが彼らと共に滑る自身の役目だと感じている。
きっとその経験と時間が彼らの未来へ繋がり、彼らの人生を照らすものなると願っている。
僕もそうだった。
先輩たちの後を追い、山に連れて行ってもらい、自然の美しさを知り、自然の中で遊び、自然尊さを感じたのだ。
そうした時間を通して、僕は人生にとって掛け替えのない時間と経験を積むことが できた。だから、僕自身も本気で彼らと向き合い次の世代へと繋いでいくことが大切だと感じている。
彼らがこの先どんな道を歩んでいこうとも、きっと少年時代に熱中したこと、楽しい思い出は心にいつまでも残り、スキーを通じて感じたこと、自然の中で遊んだその思い出は、いつまでも心に残り続けていくのだろう。そして将来、そうした体験や思い出を家族、友人、たくさんの人と分かち合い、自然を想うその気持ちが繋がっ ていくことが美しい未来、地域の未来を築いていくと思っている。
また来シーズン体も心も成長した彼らと共に滑る時間が楽しみで仕方ない。
今年も最高なシーズンもありごとうございました。