La Bandera
Diego Hidalgo Umana

赤いランクル

赤の古いランドクルーザーで山道を下りてきたのは、La Banderaマイクロミルのディエゴさんだ。ニコニコしたやさしい笑顔で英語で迎えてくれた。
ディエゴさんのランドクルーザーの荷台に乗り、ハードなすごい傾斜の山道を上がっていく。みるみる標高が上がり、ついたマイクロミルは標高1950m。
周囲は森に囲まれ鳥の声も聞こえてくる。明け方はときどき最も美しい幻の鳥といわれるケツァールの姿も見ることができるという。

ナチュラルのスペシャリスト

もともとは近隣の農家と一緒にチェリーを町の組合に売っていたが、2014年からマイクロミルを建設し、それからは収穫したコーヒーの最高のプロセスについて学び、ナチュラルプロセスに強くこだわっている。2015年からはカップオブエクセレンスにも数々入賞していて、2024年はゲイシャ種のナチュラルプロセスが9位にもなっている。

ディエゴさんとの会話から、さまざまなプロセスについてお話を伺ったが、ナチュラルプロセスの話になると熱が上がる。
「ナチュラルはすごく難しい。自分でコントロールできないからだ。天気・気温・風・太陽、あらゆる自然に委ねられている。それをちゃんと見ながら合わせていく。」

ニセコの暮らしにもつながる

ディエゴさんの話は僕がスキーやトレイルランニング、カヤックなど、ニセコの自然の中で遊ばせてもらっている時に意識していることと共通する。
同じ瞬間が二度とない自然をうまく味方にするには自然のあらゆる現象をよく観察し、経験を積み、対応していかなくてはいけない。
丁寧に天日干しされたチェリー、きれいに並べられた3段のベッドの棚は日数によってずらしていくそうだ。こだわって自然に合わせたナチュラルのチェリーはディエゴさんの作品のように感じた。

自然と向き合うからこそ

「今年は本当におかしい。収穫したのにまたすぐに花が咲いた。この状況は初めて見た。どう対応したらいいのかもわからない。」ディエゴさんはこれからは「神のみが知る」と言った。
La Banderaの乾燥場では急な雨にも対応できるように、シートが近くに置いてあったり、チェリーのベッドをすぐに屋根の下に移動できるようにしてある。
常に自然と向き合っているディエゴさんの姿勢が表れていた。
自然と向き合っているからこそ、僕らのこともやさしく受け入れてくれて、丁寧に対応してくれるのかもしれない。