「過日に、初めて行われたエチオピアCOEにて1位を獲得されたニグセ・ゲメダさんのニュークロップのオファーサンプルが届きました。カップしたところ、目を見開くくらい素晴らしく、峠ヶさんにもぜひ味わっていただきたいと思い、勝手に送らせていただきました。」
という、手紙とともに20gのお豆が届いたのは3月のこと。
早速カッピングをさせていただくと、そのフレーバーと冷めた時の甘さに驚き、シートのスコアはなんと91点もつけている。コメントでは「Lychee!」とビックリマークまでつけてしまう興奮ぶりだった。その時のSPROUTのコーヒーのオペレーションを考えると購入をする予定は全くなかったが、突然届いたサンプルとの出会いと素晴らしい感動で購入せずにはいられなかった。
慌ただしい夏が過ぎ、一つの季節が終わった頃、注文した生豆が日本に到着したという知らせがあり、SPROUTにやってきた。9月中旬のことだった。
ニグセさんは、13haの農園で、コーヒーの他に小麦、テフ、大麦、竹を育ていて、コーヒーの生産量は年間でコーヒーチェリー 15トンほどの小さな農園です。
元々国際的なマーケットとの繋がりを持っていなかったため、2019年まで自分のコーヒーを地元の個人バイヤーや ECX (Ethiopia Commodity Exchange:エチオピア商品取引所)に販売している一般的なコーヒー農家でした。
しかし、そんな中ニグセさんのコーヒーは2020 年に開催された第 1 回のエチオピア カップ・オブ・エクセレンスで 91.04 点というスコアで見事優勝を果たし、国際的に知られるようになりました。
さらに、先日開催された第2回のエチオピアのCOE(カップ・オブ・エクセレンス)でも87.56点で25位にランクインしてます。
今回ご紹介するロットは、品種が74158、精製方法がナチュラル(Natural)と、COE(カップ・オブ・エクセレンス)に出品されたロットと同一品種、同一精製です。
ニグセさんは受賞の際に話した言葉
「私はずっと、ナンバーワンになることを目指してきました。この結果を通して、私たちの素晴らしいコーヒーを宣伝し、市場獲得の機会を得られるのではないかと、とてもわくわくしています。特別な表彰を受けたことは栄誉であり、さらに頑張るための励みになります。」
僕はコーヒーの生産地を訪れたことがまだないので、紹介させていただいた言葉は全て引用である。
しかし、こういった言葉を伝えてくれている、紹介してくれた方、この道を切り開いた方々がコーヒーに対して人に対して、気持ちのいいくらいにまっすぐできれいで、僕はその人たちを心から尊敬し、信じている。だからこそ、焙煎人としてしっかり巡り会えたコーヒー豆と向き合い、人が繋いだコーヒーを「美味しい」と思える瞬間までつなげていきたいと思っている。
10月、届いたニグセさんのお豆を焙煎させていただくタイミングで、まさにこの道を切り開いていた丸山珈琲の丸山さんに立ち会っていただき、横井珈琲の横井さんにもその1週間後にカッピングしていただくという奇跡のようなことが起きた。
カッピングで僕が感じた印象はチョコレートのフレーバーを感じながらもアプリコットやラズベリーが隠れているような印象で、冷めてくるとライチの甘さが続く素晴らしいコーヒーという印象。
実際に生産地に行って自分の目でコーヒーが手元に来るまでの工程を見ることができたら、もっとコーヒーについて伝えることができるのではないかというもどかしさが常にある。実際に生産地に行くことができたとしても、その先に何があるのか、自分がどう変わるのか、何ができるのかはわからない。しかし、純粋にコーヒーに対してまっすぐで情熱を持って関わり続けている人たちが歩んできた道を知りたく、ハイキングのように五感を研ぎ澄ませ、その道を自分の目で見て肌で感じてみたい。ニグセさんのコーヒーを焙煎させていただき、コーヒーとして口にした時、おいしさと同時にそう強く思った。
一枚の手紙と20gのお豆からはじまった奇跡のような出来事をもたらせたコーヒーは、その味わいやフレーバーの中にも人の想いが詰まった特別感を感じ、さらには自分が向く方角までをも教えてくれた。
Yoshi
Sproutのオーナー
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