Home Stay Artist
Camp&Goでは、アーティストを招き、ホストとゲストが近い距離感で家に滞在するように時間を共有することで、双方に新しい視点が生まれ、アーティストの作品制作だけではなく、迎える側の私たちにも大きな影響を与えてもらえる、大切な企画の一つとしてHome Stay Artistと名付けた企画を実施しています。
今回滞在したのは、写真家の丹野篤史さん。
この企画のために福岡から約3週間かけて自転車で旅をしてニセコへやってきました。
展覧会の開催前から想像もできないカタチで企画がスタートです。
たくさんの時間を共有すること
5月25日に福岡を出発して、6月16日にCamp&Goに到着した丹野さんの第一声は「最高だった、ぜんぜん疲れてない、このまま福岡まで戻れるくらい」という言葉でした。
旅の間に撮った写真の数は2万8千枚にもなるといいます。
約3週間、2500kmもの旅でさまざまなエピソードがあったと思います。旅の話をたくさん聞きたい気持ちもありましたが、全ては写真展で表現されるという思いで気持ちをとどめました。
ニセコに到着してから写真展開催までの10日間で、どの膨大な数の写真がどのように表現されるのか、私たちには想像もできませんでした。
丹野さんの写真展のための作業が少し落ち着いたころ、ニセコの魅力ある場所を1日かけてサイクリングに出かけました。
カメラを肩から下げて、前から後ろから横から、さまざまなところからシャッターを押す姿を見て、丹野さんの旅の様子を少しでも垣間見ることができたように感じました。
私たちが何気なく見ている風景や偶然起こる瞬間を切り取っている丹野さんは、旅の間どんなものを見たり感じたりしてきたのだろう、また自分が同じ道を旅したらどんなところを切り取るのだろう、と丹野さんの視点や考え方にますます興味が湧きます。
滞在中はサイクリングだけでなく、コーヒーを飲んだり、庭でバーベキューをしたり、子どもたちと遊んだり、外食に出かけたり、観光スポットを巡ったり、写真展の開催中もトークイベントやオープニングパーティーがあったり、限られた期間でしたが、たくさんの時間を共有することができました。そんな貴重な時間は私たちに新しい視点と世界観を与えてもらえます。
記憶の一部に組み込まれた作品
実際に開催された写真展は想像とは異なる内容で驚きでした。
私の想像では旅をしてできた写真展は旅の回想録のような展覧会を想像していました。しかし、実際は全く異なるもので、旅人自身も作家自身も写真展の観客の一人という印象です。旅から日数が経過し、3週間という会期が終わりに近づくにつれ、その写真がもたらす偶然に引き込まれていくようです。
この先、私たちが旅をし、ふとどこかで見た光景だと感じたとき、きっと丹野さんの写真展の作品を思い出すでしょう。偶然がもたらす風景や音、匂いが記憶や感情を呼び起こすプルースト効果のように、丹野さんの作品が記憶の一部に組み込まれたように感じます。
Home Stay Artistの特徴は企画が終了した後も私たちの中で続いていることです。
共に過ごした時間や展覧会で得たことを私たちの中に取り入れ、暮らしに生かすことでHome Stay Artistの意義があると思っています。丹野さんがもたらしてくれた新たな世界観をSPROUTのコーヒーや店づくりにさまざまなカタチで表現していきたいと思います。
このような機会を与えてくれた方々に感謝の気持ちを込めて写真展の内容文を掲載させていただきます。
斜め上から自分を見ている。
丹野篤史
会期 : 7/2(日)- 26(水)木曜定休 / 入場無料
時間 : 11:00 – 19:00
会場 : Camp&Go White Wall Room
このたび、ニセコのCamp&Goにて丹野篤史「斜め上から自分を見ている。」を開催します。
丹野さんは、音楽と自転車を生活の軸に置く福岡在住の写真家です。
僕らが「ホームステイ・アーティスト」と呼ぶ、アーティストにニセコに滞在してもらうというCamp&Goのプロジェクトへ丹野さんに声を掛けさせてもらったところ、しばらくしてこう返事が来ました。「ニセコまで自転車で行ってみようと思います。とりあえず、展覧会についてはノープランで出発し、その旅で自転車を漕ぎながら見たもの、感じたもの、思ったことを経て、何をするか決めたいと思います」と。僕はこの話を聞いて、素晴らしいアイデアであり、まさにホームステイ・アーティストというプログラムにぴったりだと嬉しく思いました。
5月25日に福岡を出発し、約2,500kmの旅を終え、6月16日にニセコに到着した丹野さんの第一声は、「最高だった、ぜんぜん疲れていない、このまま福岡まで戻れるくらい!」でした。
丹野さんの旅がどんなものだったのか、その時間の中で何を見て、感じ、思ったのか。
そしてそれがどんな展示になったのかを、ぜひ、みなさんの目で確認してください。
展覧会初日の夜には、オープニングパーティーとトークを行います。丹野さんご本人からもじっくり聞いてみましょう。
(Camp&Go キュレーター 豊嶋秀樹)
フロアの空気に寄り添って/壊して を生業とするミュージシャンが、カメラと自転車でNIPPONの路をフロア化した/しそこなった”コンタクト”の記録。倶知安での展示はチェックポイントの「途中」なので、ライドに、おしゃべりに、痛飲にjoinして更新してくださいね〜 脱線と迷子の豊かさに淫する場!
(澤隆志 映画祭ディレクター → インディペンデントキュレーター)
<アーティストメッセージ>
人とカルチャーと生活が混ざり合った倶知安のクロスポイント「Camp&Go」という特別なスペースで展示が行えることを嬉しく思っています!自分に似た誰かの珍道中を斜め上から観察しているような…ずっとそんな気分だった今回の自転車旅そのままの、僕が撮ったけど、僕が撮っていない、僕が選んだけど、僕が選んでいない、そんな展示になっています。言い換えれば、僕はまだ旅の途中だということなんだと思います。そんな旅ができていることを、心から嬉しく思い、全力で楽しんでいます。僕の旅の途中経過を見に来てください!
(丹野篤史)
<アーティストプロフィール>
Atsushi Tanno / 丹野篤史
1974年福岡生まれ。10代半ばにパンクロックに衝撃を受け音楽活動を開始。その後はDJ、ギタリストとして音楽のフィールドで活動。2000年に始めたロードバイクとの出会いをきっかけに、ライド中に目に入る風景を記録するために手にしたコンパクトカメラで写真の世界に魅了され、写真家としての活動を始める。動きあるライドシーンを自ら動きながら撮影したサイクリングフォトやランドスケープを中心に、アーティストのポートレイト、ファッション、雑誌・カタログ、ライブなどで活躍。また自ら撮影したイメージを使ったコラージュ作品などの発表している。
@e_climber2
<主な展示経歴>
青森県立美術館「Love Love Show2」2017 青森
Rapha Fukuoka「Sefuri」2018 福岡
and wander OUTDOOR GALLERY「山を思うプロジェクト」2020 東京
ミハラヤスヒロ masion My labo「chaos channel」2021 福岡
SPC 「偶然の蓄積、無限の片隅」2022 福岡
Yoshi
Sproutのオーナー
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